交渉における最強の武器「BATNA」とは?
交渉における最強の武器「BATNA」
今回は、交渉における最強の武器ともいえる概念をご紹介します。
この概念を知っているだけで、交渉が一気に進めやすくなり、その効果もすぐに実感していただけると思います。
その概念が「BATNA(バトナ)」です。
BATNAとは、「Best Alternative To Negotiated Agreement」の頭文字を取ったもので、日本語では「今の交渉が決裂した場合の最善の代替案」を意味します。
BATNAを理解するためには、以前ご紹介した交渉の4つの原則の一つである「選択肢(OPTION)」との違いを理解することが重要です。
OPTIONとBATNAの違いとは?
OPTIONとは、現在交渉している目の前の相手との間で考えられる選択肢のことです。
これに対してBATNAとは、目の前の相手との交渉がうまくいかなかった場合に選択できる、自分にとって最もメリットの大きな代替案のことです。
たとえば、ある原材料を仕入れるために、A社と交渉しているとします。
A社との間で、原材料の価格や納品時期などについて、さまざまなパターンを検討しているのであれば、これらはOPTIONです。
一方、A社との交渉がうまくいきそうにないため、別のB社から仕入れることも視野に入れているのであれば、このB社との交渉がBATNAになります。
では、その原材料をA社が独占的に販売しており、他の企業では取り扱っていない場合はどうでしょうか。
この場合、基本的にはA社としか交渉できないため、他社から同じ原材料を仕入れるというBATNAはありません。
もっとも、同じ原材料にこだわらず、「別の原材料に切り替える」というBATNAを考えることはできます。
このように、BATNAは必ずしも「別の交渉相手」を意味するわけではありません。
目の前の相手との交渉が成立しなかった場合に、自分が取り得る最善の代替案を考えることがポイントです。
交渉学の考え方は変化しています
交渉学では、ひと昔前まで「いかに自分が勝つか」、つまり「相手よりも多くのパイを得るか」という考え方が主流でした。
しかし近年では、協調的な手法を通じて全体の利益を増やし、お互いにより大きな利益を得るという考え方が主流になっています。
簡単にいえば、限られたパイを分けるのではなく、パイそのものを広げるという考え方です。
私も、この後者の考え方を基本として交渉学を教えています。
もちろん、状況によっては、相手よりも多くのパイを得るという前者の考え方で交渉すべき場面もあります。
大切なのは、それぞれの状況に応じて、適切な交渉の考え方や手法を選ぶことです。
なぜBATNAが交渉における最強の武器なのか?
では、なぜBATNAが交渉における最強の武器となるのでしょうか。
それは、私たちが交渉において意思決定をするとき、目の前の相手から提示されている「OPTION」と、自分が持っている「BATNA」を比較して判断するからです。
たとえば、あなたが不動産を売却する立場にあり、目の前の買主Aと交渉しているとします。
Aから「1億円で購入したい」という提案を受けました。この提案がOPTIONです。
一方で、別の買主Bから「1億2,000万円で購入したい」という申し出を受けているとします。このBからの申し出がBATNAです。
この場合、Aから提示されたOPTIONと、Bから提示されたBATNAを比較して、どちらが自分にとって有利なのかを判断します。
今回の例ではBATNAの方が有利ですから、他の条件に違いがなければ、Bと契約することになります。
反対に、目の前の相手から提示されたOPTIONの方がBATNAよりも有利であれば、その相手との合意を選択することになります。
BATNAが強いほど交渉を有利に進めやすくなる
このように、OPTIONとBATNAは、交渉における意思決定を左右する非常に重要な要素です。
さらに重要なのは、BATNAが強ければ強いほど、目の前の相手との交渉を有利に進めやすくなるという点です。
先ほどの不動産売買の例で考えてみましょう。
あなたには、Bから「1億2,000万円で購入したい」という申し出があります。
その状態でAと交渉するのであれば、「Bという人から1億2,000万円で購入したいという申し出を受けています」と伝えることができます。
その結果、Aから「それなら私は1億5,000万円出します」と、これまでよりも有利なOPTIONを引き出せる可能性があります。
強いBATNAを持っているからこそ、目の前の相手との交渉でも、より有利な条件を求めることができるのです。
BATNAが強いほど交渉を有利に進めやすくなる
ここまで見てきたように、BATNAは交渉の結果を左右する非常に重要な概念です。
目の前の相手とどのような条件で合意するかを考えるだけではなく、「この交渉が成立しなかった場合、自分にはどのような選択肢があるのか」「その中で最善の代替案は何か」を考えておくことが大切です。
ぜひ今後、交渉をするときには、BATNAを考える習慣をつけてみてください。
今後は、BATNAのより具体的な活かし方についてもお伝えしていきたいと思います。
すぐに役立つ交渉学と労務管理をメールで学ぶ
弁護士山口真彦によるメールマガジン「ウィンベル式経営三種の神器―労務×交渉学×MBA―」では、ビジネスの現場ですぐに活かせる交渉学の実践的な解説や、経営者が押さえておきたい労務管理のポイントを、毎週わかりやすくお届けしています。
ここでしか読めない最新情報や具体例も配信しています。
お名前とメールアドレスだけで簡単に登録できますので、ぜひお気軽にご登録ください。



