採用-労務トラブル防止のための最強の対策-

経営者のための労働法講座Vol.02「採用」
stand.fm「ウィンベルリスクマネジメントチャンネル」書き起こし
【2025年5月21日放送 経営者のための労働法講座Vol.02 採用】

はじめに

弁護士の山口真彦です。

本日も経営者のための労働法講座を始めていきたいと思います。

採用

Vol.01 経営者の心構えでもご紹介しましたが、労働トラブルの発生を限りなくゼロにできる予防策があります。

それが、本日のテーマ「採用」です。

採用というのは、法律的にも比較的対策が取りやすい分野です。

採用さえ失敗しなければ、労働トラブルの発生を限りなくゼロにすることができます。

三菱樹脂事件

古い判例ですが、「三菱樹脂事件」という有名な判例があります。

この判例は、憲法の思想・良心の自由を学ぶ時などによく出てきますが、人事労務の観点からも非常に重要な判例になります。

何が重要かというと、

  • 会社に対して、採用の自由を認めている
  • 採否の決定のための調査の自由も認めている

この2点が、非常に重要なポイントです。

採用の自由については
誰を採用するのか、どのような条件で採用するのかは会社の自由だ。
調査の自由については
採否の決定のために応募者に対して調査を行うことは、広く認められる。

という判例です。

炭研精工事件

次に、「炭研精工事件」という裁判例をご紹介します。

この事件は、会社に調査の自由を認めた上で、「応募者は、労働能力評価や職場への適応性等の判断のために会社が行う必要かつ合理的な質問に対しては、信義則上、応募者に対しては真実を告知する義務がある。」という裁判例になります。

「労働トラブルを防止する」という観点

つまり、採用は会社にとって「様々な工夫を講じることができる重要な労働トラブル対策の1つ」です。

それを踏まえ、自社の採用過程や採用の方法等を振り返ってみてください。

その際、「労働トラブルを防止する」という観点で採用の仕組みを構築しているか。という点をチェックしてください。

多くの企業では、「どんな人を採用したい」という視点の採用の仕組みはしっかり作られています。

しかし、「労働トラブルを防止する」という観点では、

  • どんな人を採用しないのか
  • どんな人は採用したくないのか

このような視点で仕組みを作る必要があります。

どの会社にも「◯◯な人材はうちに合わない」という基準が必ずあると思います

これを言語化し、該当する人を採用過程で見つけ出す仕組みを構築することが重要です。

絶対に採用してはいけない人

労働トラブル対策の観点から見ると、絶対に採用してはいけない人が明確に存在します。

こちらは、別の機会でご紹介できればと思いますが、実はそのような人を面接やテスト等の過程を通じて見つけ出すことも可能です。

まずは、一度自社の採用を見直してみてください。

繰り返しになりますが、労働トラブルを防止するという観点から、どんな人だったら採用しないのか?どんな人を採用したくないのか?これを言語化してみてください。

採用を失敗しないために

採用を失敗した経験のある経営者の方は、その失敗例が採用しない人のペルソナになっていきます

どんな人だったか振り返ることで、よりペルソナが明確になると思います。

その上で、そのような人を採用しないために、一般的な採用過程(書類選考や面接など)に加えて、以下のような具体的な方策を考えてみてください。

  • どのようなアンケートを取ればよいのか
  • アンケートの質問すべてに意図を持って作っているか
  • どのような適正テストをすればよいのか

面接の印象

最後にとても重要な点をお伝えします。

労働トラブルを起こす人の共通点。それは・・・、

面接の印象はすこぶるいい

です。

非常に重要なので、覚えておいてください。

なお、面接の印象が良ければ、全員労働トラブルを起こす可能性があるということではありません(その点については誤解しないでください)。

労働トラブルを起こす人は、面接の印象は非常にいい。ということです。

そのため、面接時に非常に印象の良い人は、労働トラブルを起こす人、起こさない人の2つに分かれます。

労働トラブルを起こす人を見抜くポイント

面接時に非常に印象の良い人の中から、

  • 本当に会社に貢献してくれる優秀な人材
  • 潜在的に労働トラブルを起こす可能性のある人材

を見抜き、的確に振り分けていく必要があります。

見抜くための重要なポイントは、

自分の主観は信じないこと

です。

「私には見る目がある。」と思ってしまうと判断が甘くなり、トラブルを引き起こす可能性のある人材を採用してしまうことになります。

採用の判断は、アンケートやテストなどの客観的指標に基づいて行うことが非常に重要です

おわりに

ぜひ一度、自社の採用の仕組みを振り返ってみてください。

そして、労働トラブルを未然に防ぐという観点から、

  • 「こういう人は絶対に採用しない」という基準を言語化する
  • その基準に基づいて、どのようなアンケートやテストを設けるべきかを検討

上記の取り組みを実践してみてください。

本日は以上です。ありがとうございました。

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弁護士山口真彦
山口真彦
弁護士

ウィンベル法律事務所/ウィンベル合同会社代表。

大学卒業後、中小企業で営業マンとして勤務したのち弁護士へ。

弁護士登録後は、自身が中小企業で勤務していた経験をもとに、企業に関わるすべての人を幸せにするために弁護士にできることをテーマに日々活動している。

交渉学に基づいた交渉術を駆使し、早期円満解決がモットー。

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